2018/06
 123456789101112131415161718192021222324252627282930 

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

友よ、過去は今でも疼いているか

このお題を是非とも使いたくてブログを立ち上げたようなものですが、自分の考えていたものとはちょっと違う表現になってしまった部分もあって、改めて文章の奥深さを痛感しました。

CP要素を抜きにしてグリーン→レッドという感じですかね。

今は昔。
グリーンの中でレッドという幼馴染は気付いたときには一歩後ろにいた。
幼い頃のレッドは無口というわけではなかったけれどもお喋りではなかった。
表情の変化は乏しくても、それでも楽しいときには心からの笑顔を浮かべる子供だった。
グリーンが遊びに誘えば引っ込み思案なところのあるレッドが少し恥ずかしそうに控えめに頷いて、でも差し出したグリーンの手を拒むことはせず、そっと強く握り返してくれた。
グリーンにしてみれば、その頃のレッドは友達というよりも弟というポジションが近かったのかもしれない。

何をするにもグリーンがいなければ何もできなかったレッド。
その彼はいつの間にかグリーンと変わらない背丈になり、うつむきがちだった視線は絶えず前を向くようになった。
いつもグリーンの一歩後ろを頼りなくついてきたレッドはしっかりと自分の両足を地につけてグリーンの隣に立っていた。

そして。
祖父であるオーキドから研究所に呼びつけられた、あの日。
レッドははじめて自分のポケモンを手にし、後に彼のトレードマークとなる帽子を被り、グリーンを真直ぐに見据えた。
その時。
グリーンははじめてレッドの顔を正面から見た気がした。
顔だけではなく、レッドという人間の存在そのもの、輪郭、その心根に潜む強さ、揺るぎない鋼の意志の片鱗をようやくはっきりと自らの意識に刻み込まれた気がしてならなかった。
自分は一体なにをもってレッドをレッドとして認識していたのか。
ひっくり返されて空っぽになった意識の中に新たに並々と注ぎこまれるレッドという人間の情報、彼にまつわる過去の記憶、今まで彼にまとわりついていた噂話の類、拾い集めた情報に対するグリーンの推測。
この瞬間。
グリーンの中でレッドは一度死に、もう一度生を得た。
ただの幼馴染でも親友でもなく、ライバルとして。

生まれ故郷を旅立ったグリーンとレッド。
行く末に目指すものが同じである以上、グリーンとレッドの旅は交錯し、出会う度にグリーンはレッドに勝負を申し込んだ。
その度に敗北しては悔しさに全身を震わせた。
それでもグリーンはレッドの前に在り続けた。
けれど、最早それは形だけでしかないとグリーンは気付いていた。
レッドがいるのはグリーンの後ろでも隣でもない。
彼はいつの間にかグリーンを追い越して、前へ、前へと歩き続けていた。







「グリーン」
久しぶりに名前を呼ばれた。
どこか耳慣れないのは声変わりしてからお互いまともに話すことが少なくなったからだろう。
「俺は行くよ」
いつから話をする回数が減ったのか。
いつからピアスなんかつけて洒落っ気が出たのか。
いつから笑わなくなったのか。
いつからこんなに強くなったのか。
いつからその眼で世界を見渡すだけの位置にたどり着いたのか。
いつからそんな眼をするようになったのか。

いつからいつからいつからいつからいつからいつからいつからいつからいつからいつからいつからいつからいつからいつからいつからいつからいつからいつからいつからいつからいつからいつからいつからいつからいつからいつからいつからいつからいつからいつからいつからいつからいつからいつからいつからいつからいつからいつからいつから―――どうして。

グリーンはレッドに距離を感じるようになったのか。

今しがた手にしたチャンピオンの栄光をいともたやすく放り投げてレッドは再び前を向く。
大地を踏みしめるようにバトルステージを降り、ここではないどこかを目指す。
「なあ、レッド」
グリーンの呼びかけにレッドが肩越しに振り返る。
自分と変わらぬ背丈であるはずなのに背中はずっと大きく見えた。
「君は忘れてしまったのか」
故郷を。
何色に染まることもなく、また染まることもできる、小さな田舎町。
二人でじゃれ合いながら駆け抜けた草原。
泥だらけで帰って一緒に家族に叱られたり、呆れられたり。
頬を撫でる風と、母の、姉の作る、食事の香り。
二人で泣いて、笑って、悲しんで、怒って、喧嘩して、楽しんで、面白がって、悔しがって、そんな思い出。
グリーンですら忘れかけていたそれらすべてをレッドはとうに手放してしまったのか。
それとも。
「覚えているよ」
グリーンが何を言わずともレッドはその真意を知っていた。
それが二人のすべてであるとグリーンは思い出す。
グリーンとレッドの間には言葉にしなければ通じないこともあれば、言葉でも通じないものがあった。
それに反して、決して言葉がなくても通じるものがあった。
「俺は覚えているよ、グリーンとのすべてを、マサラの家族を、そこに住む人達を、旅の中で出会った人々を、戦ったトレーナーたちを、通り過ぎてきた景色を、ポケモンを、自然と科学の偉大さを。それを全部背負って、俺は生きていくよ」
はじめてお互いのポケモンで、ポケモンバトルした日。
あの日と変わらない、そしてあの日へと繋がる過去を凝縮した真直ぐな眼。
その答えこそがグリーンの中で欠けていたレッドの、最後のピースだった。
「やっぱり君は僕の幼馴染でライバルだよ」
グリーンは心からほほ笑んだ。
それを見たレッドもまたほほ笑む。
懐かしい、はにかんだような笑顔にグリーンの胸の内は不思議と綺麗に昇華された。





end

« 旅は終わらない | ホーム |  凍え死ぬまで眠ったら »

コメント

この記事へのコメント

コメントを投稿する


管理者にだけ表示を許可する

 | ホーム | 

プロフィール

虹賀真琴

Author:虹賀真琴
のらりくらりと生存中腐女子。
日常会話が何故かネタとギャグ
ばかりのイタイ生活送ってます。

*初めてのお客様はReadMeに
お目通し願います!!

*現在の拍手
LD1×3 
(1~3ランダム)

FC2カウンター

ブロとも申請フォーム

ブログ内検索

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。